先日たまたま、地上波テレビから追放されてしまった中吊り広告してもしょうがない、大学の学費と並んで、日本国内の物価上昇率より値上がりが激しい、合併号だらけで名ばかりと化した「週刊誌」のひとつ、週刊FRIDAYを見てしまった。

セクシー女優のスクープヌード(書き方が昭和だ…)こそさすがに見当たらなかったものの、グラドルの袋とじ、乃木坂46、女子アナ、ジャニーズを除く芸能人のスクープ写真…
東海道新幹線開業以前に生まれた面々を相手にする、新規参入者が期待できず徐々に客が減る限界集落状態だなぁと苦笑する以外になかった。

そこに、「おすすめの株式」なんてものが一覧表形式で羅列されていたが、「1単元の購入価格(参考値)」「業績好調」「高利回り」を意味する
文字は並んでいても「PER」「PBR」の記載はなし。単に最近、悪評が出たところを除いた上での東証上場有名企業の羅列でしかなかった。

さすが、大株主になっているところに「日刊ゲンダイ」がある、講談社だわ。都合のいい単語だけを並べるワードサラダだわ。
もっとも、証券会社がこさえる「目標株価」とか「推奨レポート」でさえ、ワードサラダの傾向が露骨なので、鵜呑みにしてはいけないんですが…

★★★★★

日本の株式市場に上場する企業は、現時点では3ヶ月に1回、決算公告を出さなければならない。
義務ではないが、決算説明会資料も出すところも多い。

企業のスタンスのようなものが、おぼろげにでも見えてきてしまう。

花王の2022年3Q決算説明会資料、正直言ってやるきなし。露骨だった。
「原材料費高騰でどーにもならない、通期下方修正しかないのに放置プレイ」
2022年最終決算時の同資料でも、諦め感満載。
「原材料費高騰がもっとあるかも。2023年の予想はありうる最悪の数字にしとけ」

資生堂の決算説明会資料は、「こんなに素晴らしいんですよ」「都合の悪いことは華麗にスルー」なんて、自社製品のプロモーションにそっくりな構成と化してしまっている。
端的だったのが、それを使った2020年2月の社長プレゼン。
示された数字は「中国など絶好調が続いて2019年より売り上げも利益も激増だぞ」だった。
中国・武漢発の新型コロナが、武漢周辺から世界へ拡散し始め、売り上げの中国比率が3割程度の資生堂で、「2020年度の影響はどーなの」と記者に聞かれても、「激増」の数字を押し付けるだけ。
エリクシール買わんかい営業トークが、株買わんかいに変えられていると思えてしまう。

★★★★★

日本では、証券会社の社員や外交員、評論家、インフルエンサー等に「大幅に上がる株」「テンバガー」みたいな文言を操る面々が多過ぎる。彼らはてめえの立場のために耳当たりのいい言葉ばかりを多用する。その結果、富士急行やオリエンタルランドあたりを頂点に、知名度が極めて高い上場企業を中心に、株価指標的に異常割高になってしまっているところも散見される。

資生堂、コーセー、ポーラオルビスと、女性向け化粧品を主たる生業としているところもそうだ。
※花王は「主」ではない。マンダムは女性向け化粧品がメジャーなのはインドネシアぐらい。

最近でも、中国のコロナ禍からの経済回復で、高級衣料品、ハンドバッグ、宝飾品、化粧品等の対面売り上げが伸び…なんてお話も出てきている。それはそれでいいんですが、化粧品に限っては5月以降どーなの、なんて疑惑が出てくる。

読売新聞が1月5日に出した記事、どうしても引っかかる。


中国、今度は化粧品標的…繰り返される大国の要求と摩擦 [世界秩序の行方]第1部 攻防経済<2>  : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

化粧品を対象とした中国政府の規制強化が波紋を呼んでいる。複数の関係者によると、当局は原料の全成分を今年4月末までに登録するよう企業に求め、完了しなければ中国での販売ができなくなるという。外国メーカーを標的に、組成情報の全面的開示を狙ったものと受けとめられている。
(中略)
同規定では化粧品メーカーに対し、原料名や比率を明記した調合表の提出を義務づけ、原料メーカーにも成分比率の開示を求めている。
(以下略)

原料の全成分」がどの程度かを探ってみた。
日本では
原料の全成分」の届け出こそ必要だが、具体的比率の明記までは不要。比率も「1%未満の原料」は「名称」だけでよし。欧米でもほぼ同様。

成分比率の開示が問題だ。知的財産をみすみす中国にくれてやることになってしまう。
その知的財産を使って、格安な後発品を発売してくるところも確実に出てくる。

というわけで、売り上げを持っていかれかねない格安後発品の出現を防ぐためにも、
成分比率の提出に拒絶反応を示すという事になっている。

★★★★★

中国当局へ、中国国内で化粧品を販売するために4月末までの成分比率の開示をしなければならないとすること、後々の棄損を防ぐ意味で、日米欧の主要化粧品メーカーの多くは「中国撤退」に至るかもしれない。

ロレアル、LVMH(仏)
ユニリーバ(英)
エスティローダー、P&G(SK-Ⅱなど)、コティ、ジョンソン・エンド・ジョンソン(米国)
資生堂、花王(カネボウ含む)、コーセー、ポーラオルビス(日本)
バイヤスドルフ(独)

世界の東西、半導体、通信機器あたりですでに表面化している貿易規制が、中国での化粧品販売にも及ぶ可能性が極めて高い。
ロシアのウクライナ侵攻で、アメリカ率いる西側各国と、ロシアを取り込もうとする中国と中国の支配が及んでしまった東側の対立がキツくなってしまっていて、西側の通商当局が成分内容の開示を止めさせる動きもあっても驚けない。

中国での化粧品売り上げが全社の4分の1ぐらいを占める資生堂とかコーセーになってしまうと、経営危機に至るまでの事態はないとは思うが、赤字転落、リストラは免れないとなってしまう。当然のように、株価暴落も。
いくら、来日客がデパートやドラッグストアなんかで爆買いしたとしても、焼け石に水にしかならない。

★★★★★

後追いの形ではあるが、NHKや東洋経済がこの規制についてチラッとは触れている。あくまでチラッと。しかし世間にはほとんど流布されていない。この件では、各社はダンマリを決め込んでいるようだ。4月30日までに開示となっているが、29日は土曜日、30日は日曜日。要注意だ。