ジョイフル本田、小林製薬に続いて日揮ホールディングスが、アメリカでのASR取引(Accelerated Share Repurchase)が日本に持ち込まれた形での「コミットメント型自己株式取得(FCSR)による自己株式取得」にて自社株買いを行うことになった。
日揮ホールディングスのプレスリリースでは、野村證券が提供したと思われるひな形に日付と数字を載せたものが掲載されているが、ひとつだけ疑問点がある。
資料を文書化すると
①野村証券が「賃借市場等」から株を借り受けたものを、日揮の自社株買い(=10日の終値@1657、1207万株)応募に応じる
単価は10日の終値1657円、比率は既存自己株式を除いた上での発行済み株式の4.77%
②以降、所定の調整取引までの期間、野村證券は株式市場などで日揮株を取得する
③調整取引を迎えた際、所定期間でのVWAP(平均取引価格)と①での取得価格(@1657)の差により、日揮株での精算を行う
VWAP>1657の場合は、所定の株式数を日揮は野村証券へ交付する
VWAP<1657の場合は、所定の株式数を野村証券は日揮へ、①で引き渡した株式とは別に引き渡す
となるのであるが、①にある
「賃借市場等」から株を借り受けた
の「賃借市場等」は誰よ? となる。
日本の証券取引所に上場する企業の株式保有比率が5%以上の場合、株式保有比率の増減に関わらず大量保有報告書を提出しなければならない。
だが、ここでの自社株買いは4.77%だ。
野村證券自身が10日現在で4.77%保有していても大量保有報告書は提出されない。@1657未満になっていれば、②のVWAPが1657を割らない限り野村證券に利益が出るでないかい。
ついでに、この場合は今回、新たに「自己株式取得が発生しない」ということになってしまう。
なに、この金融工学(怒)。
「自己株式取得」用の株式は、すでに取得済みなので、「自社株買い」が発表されてもそれ用の新たな株式調達がない。
株式調達がなければ、株式調達がもたらしうる株価上昇もない。
ふざけんなよ。
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日揮の件もアレだが、最近「自己株式取得」が増えたとはいえ、その大多数が
自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による自己株式の買付けに関するお知らせ
なのはなんざんすか。
持ち合い株式の保有比率が高過ぎるから、株式市場で売り切れず、自己株式立会外買付取引を使って引き取ってもらうしかない。
と、メガバンク、生保、損保、大取引先が持ち合い株解消に、自己株式立会外買付取引を使っていると思える。
当然、自己株式立会外買付取引で自社株を引き取ったところは、その相手の株を保有していれば売ると思えるが、
それがメガバンク、生保、損保のようなところだと「大株主」と言えるほどの保有比率にしかなっていないので、株式市場で処分していると思われ。
持ち合い株式の解消に「自己株式取得」を使うって、「株主還元」と美化して言っているんじゃなくて、ただの「株式交換」じゃないかと。
今週だけでも、森永製菓、永谷園、東武鉄道、ミツウロコが「株式交換」と化していたとわからされる。
伊藤忠商事、ホンダのように「ToSTNeT-3」「市場買付」併用型もある。
いくら、マスゴミが「株主還元」ときれいごとで表記しても、実態はこれですもの。
①東証が公表した、上場企業に適用する企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)では、
企業が互いの株式を持ち合う政策保有株の削減を促している(2018/6/1)
→子会社や関連会社にしている所は除く
②大株主から自社株を引き取っても、その手段に関係なく東証上場基準を満たしている所には関係なし
a)流通株式時価総額→変わりようがない
b)流通株式比率→満たす満たさないに関係なく比率は少なからず向上する
c)売買代金→変わりようがない
武田薬品工業のように「Shireのれん」で資産が膨らんで名ばかり1倍割れのようなところは除くとしても、
東証がいくらPBR1倍割れ撲滅とやっても、上場企業にやる気がないところが多過ぎ。
規則を守って、ジリ貧まっしぐら…そんな惨めさが、ToSTNeT-3乱用に現れている。
株を売る証券会社、投資信託を通して間接的に株を売る銀行・信用金庫・保険会社、
「営業ノルマをやれ」一辺倒のバカの一つ覚えなんてやめて、構造的な不当割安株を買ってもらう知見を作れよ。
それから、日経平均とかMSCI準拠だなんて、異常割高オリエンタルランドを大量に持っていますなどと年金基金担当者が胸を張るのもやめろ。