知的財産

以前、Yahooファイナンスの掲示板に、読売新聞電子版発特集記事のリンクが張ってあって、その内容は
「中国国内で販売する化粧品について、全成分を2023年4月末までに中国当局へ届け出をしないと、中国国内で販売ができなくなる」→販売規制
「「全成分」の基準が、世界的な届け出基準より厳しい結果、その届け出の閲覧でいままでは作れなかったコピー商品が、中国当局への届け出を参照することで作られかねない」→知的財産の流出
ということだった。

届け出を行い中国での販売を続けられても、中国企業などにコピー商品を作られ、世界各地でそちらに売り上げをドカンと持っていかれるこらいなら、中国撤退の方がマシだと、非中国企業は軒並み撤退するんじゃないの? と察しがついた。

そのあたりについて、ちらりと振れたのが以下。

中国全土で5月以降、西側化粧品が発売停止に至る可能性も

(クリックすると内容がみられます)

ところが、4月に入って仏ロレアル、資生堂の現地から「中国での売り上げは大きな伸びが期待できます」なんて、論理矛盾する記事が入ってくるありさま。

おかしい。品物がないのに、どーやって売るの?
アメリカによる対中ハイテク輸出規制、G7の対ロシア制裁・ハイテク輸出規制への対抗規制のターゲットに化粧品が輸入規制対象品にされても不思議じゃないだろ。輸入ハイブランド・ぜいたく品の消費で中国政府は外貨を減らしたくないのでは?

なんて思っていたが、ロレアルや資生堂なんかが天狗になる理由が見つかってしまった。

新型コロナのせいにして、届け出の最終期限を、2023年4月末から12月末まで、8ヶ月先送りしやがった。

ロレアル、ユニリーバ(Doveなど)、P&G(SKⅡ、マックスファクターなど)、エスティローダー、コルゲート、ジョンソンエンドジョンソン、資生堂、バイヤスドルフ、花王(含むカネボウ)、LVMH…ご丁寧にも世界売り上げ上位企業は「韓国のアモーレパシフィック」「ブラジルのナチュラコスメティコス」を除いて悉くG7国の企業と来ている。上位企業が届け出ないから、不本意ながら中国当局は締め切りを延期してまで、届け出させようとしているんだわ。

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新型コロナウイルスの流行など初期段階の影響を受け、一部の企業では化粧品原料の安全性情報の収集・入手が困難な状況にあることから、2023年3月27日に中国薬品監督管理局(NMPA)が新たに経過措置を発表、今後以下を準じて原料安全性情報を対応するようにとする:

2024 年 1 月 1 日より、登録者・備案者が特殊化粧品または普通(一般)化粧品を申請する場合、製品に配合されている全ての化粧品原料の安全性情報の提出が必要とする

② 2021年5月1日より前に登録または登記された化粧品で、製品処方が「化粧品安全技術規範」に品質規格要求に該当する原料を使用している場合、登録者・備案者は2024年1月1日までに原料安全性情報の補正提出をする必要がある。製品の処方に使用されるその他の原料の安全性情報資料の提出を求めないが、今後の抜き打ち検査に備えるために登録者・備案者が保管する必要がある。

③ 2021年5月1日から2023年12月31日までに登録・備案が完了した化粧品について、製品の処方に防腐剤、日焼け止め、着色、染毛剤、シミ取り、美白特殊成分が含まれる場合、登録者・備案者は2024年1月1日前までに、関連する原料の品質規格証明(CoA)または原料安全性情報資料を補正・提出する必要があります。製品の処方に使用されるその他の原料の安全性情報資料の提出を求めないが、今後の抜き打ち検査に備えるために登録者・備案者が保管する必要がある。

<解釈>中国国家監督管理局が公表した化粧品原料安全性情報の管理措置について – CCIC JAPAN

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日本語訳された文章、まどろっこしいのだが、要するに2023年12月31日までに中国当局へ届け出をしないと、2024年には中国国内で売ってはならないってことだ。
ですがね、12月31日は日曜日。事実上12月29日までに届け出しろという事。

でも、知的財産を保護に動いた方がいいんじゃない?
という事で、中国当局による規制強化の届け出処置を廃止でもしない限り事実上、中国国内で西側化粧品は買えなくなるという事になります。

先日たまたま、地上波テレビから追放されてしまった中吊り広告してもしょうがない、大学の学費と並んで、日本国内の物価上昇率より値上がりが激しい、合併号だらけで名ばかりと化した「週刊誌」のひとつ、週刊FRIDAYを見てしまった。

セクシー女優のスクープヌード(書き方が昭和だ…)こそさすがに見当たらなかったものの、グラドルの袋とじ、乃木坂46、女子アナ、ジャニーズを除く芸能人のスクープ写真…
東海道新幹線開業以前に生まれた面々を相手にする、新規参入者が期待できず徐々に客が減る限界集落状態だなぁと苦笑する以外になかった。

そこに、「おすすめの株式」なんてものが一覧表形式で羅列されていたが、「1単元の購入価格(参考値)」「業績好調」「高利回り」を意味する
文字は並んでいても「PER」「PBR」の記載はなし。単に最近、悪評が出たところを除いた上での東証上場有名企業の羅列でしかなかった。

さすが、大株主になっているところに「日刊ゲンダイ」がある、講談社だわ。都合のいい単語だけを並べるワードサラダだわ。
もっとも、証券会社がこさえる「目標株価」とか「推奨レポート」でさえ、ワードサラダの傾向が露骨なので、鵜呑みにしてはいけないんですが…

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日本の株式市場に上場する企業は、現時点では3ヶ月に1回、決算公告を出さなければならない。
義務ではないが、決算説明会資料も出すところも多い。

企業のスタンスのようなものが、おぼろげにでも見えてきてしまう。

花王の2022年3Q決算説明会資料、正直言ってやるきなし。露骨だった。
「原材料費高騰でどーにもならない、通期下方修正しかないのに放置プレイ」
2022年最終決算時の同資料でも、諦め感満載。
「原材料費高騰がもっとあるかも。2023年の予想はありうる最悪の数字にしとけ」

資生堂の決算説明会資料は、「こんなに素晴らしいんですよ」「都合の悪いことは華麗にスルー」なんて、自社製品のプロモーションにそっくりな構成と化してしまっている。
端的だったのが、それを使った2020年2月の社長プレゼン。
示された数字は「中国など絶好調が続いて2019年より売り上げも利益も激増だぞ」だった。
中国・武漢発の新型コロナが、武漢周辺から世界へ拡散し始め、売り上げの中国比率が3割程度の資生堂で、「2020年度の影響はどーなの」と記者に聞かれても、「激増」の数字を押し付けるだけ。
エリクシール買わんかい営業トークが、株買わんかいに変えられていると思えてしまう。

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日本では、証券会社の社員や外交員、評論家、インフルエンサー等に「大幅に上がる株」「テンバガー」みたいな文言を操る面々が多過ぎる。彼らはてめえの立場のために耳当たりのいい言葉ばかりを多用する。その結果、富士急行やオリエンタルランドあたりを頂点に、知名度が極めて高い上場企業を中心に、株価指標的に異常割高になってしまっているところも散見される。

資生堂、コーセー、ポーラオルビスと、女性向け化粧品を主たる生業としているところもそうだ。
※花王は「主」ではない。マンダムは女性向け化粧品がメジャーなのはインドネシアぐらい。

最近でも、中国のコロナ禍からの経済回復で、高級衣料品、ハンドバッグ、宝飾品、化粧品等の対面売り上げが伸び…なんてお話も出てきている。それはそれでいいんですが、化粧品に限っては5月以降どーなの、なんて疑惑が出てくる。

読売新聞が1月5日に出した記事、どうしても引っかかる。


中国、今度は化粧品標的…繰り返される大国の要求と摩擦 [世界秩序の行方]第1部 攻防経済<2>  : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

化粧品を対象とした中国政府の規制強化が波紋を呼んでいる。複数の関係者によると、当局は原料の全成分を今年4月末までに登録するよう企業に求め、完了しなければ中国での販売ができなくなるという。外国メーカーを標的に、組成情報の全面的開示を狙ったものと受けとめられている。
(中略)
同規定では化粧品メーカーに対し、原料名や比率を明記した調合表の提出を義務づけ、原料メーカーにも成分比率の開示を求めている。
(以下略)

原料の全成分」がどの程度かを探ってみた。
日本では
原料の全成分」の届け出こそ必要だが、具体的比率の明記までは不要。比率も「1%未満の原料」は「名称」だけでよし。欧米でもほぼ同様。

成分比率の開示が問題だ。知的財産をみすみす中国にくれてやることになってしまう。
その知的財産を使って、格安な後発品を発売してくるところも確実に出てくる。

というわけで、売り上げを持っていかれかねない格安後発品の出現を防ぐためにも、
成分比率の提出に拒絶反応を示すという事になっている。

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中国当局へ、中国国内で化粧品を販売するために4月末までの成分比率の開示をしなければならないとすること、後々の棄損を防ぐ意味で、日米欧の主要化粧品メーカーの多くは「中国撤退」に至るかもしれない。

ロレアル、LVMH(仏)
ユニリーバ(英)
エスティローダー、P&G(SK-Ⅱなど)、コティ、ジョンソン・エンド・ジョンソン(米国)
資生堂、花王(カネボウ含む)、コーセー、ポーラオルビス(日本)
バイヤスドルフ(独)

世界の東西、半導体、通信機器あたりですでに表面化している貿易規制が、中国での化粧品販売にも及ぶ可能性が極めて高い。
ロシアのウクライナ侵攻で、アメリカ率いる西側各国と、ロシアを取り込もうとする中国と中国の支配が及んでしまった東側の対立がキツくなってしまっていて、西側の通商当局が成分内容の開示を止めさせる動きもあっても驚けない。

中国での化粧品売り上げが全社の4分の1ぐらいを占める資生堂とかコーセーになってしまうと、経営危機に至るまでの事態はないとは思うが、赤字転落、リストラは免れないとなってしまう。当然のように、株価暴落も。
いくら、来日客がデパートやドラッグストアなんかで爆買いしたとしても、焼け石に水にしかならない。

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後追いの形ではあるが、NHKや東洋経済がこの規制についてチラッとは触れている。あくまでチラッと。しかし世間にはほとんど流布されていない。この件では、各社はダンマリを決め込んでいるようだ。4月30日までに開示となっているが、29日は土曜日、30日は日曜日。要注意だ。

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